1B-04
ピレン骨格を導入したEu錯体の吸熱型エネルギー移動に基づく発光
○細谷 祥太1, 王 夢菲2,3, 長谷川 靖哉2,3, 北川 裕一2,3
(1北大院総化, 2北大院工, 3北大WPI-ICReDD)
この度は第40回希土類討論会において学生講演賞という大変名誉ある賞を頂き、誠に嬉しく思います。本発表に際しご指導いただきました北川裕一准教授をはじめ、長谷川靖哉教授、王夢菲特任助教および研究室の皆様に深く感謝申し上げます。
三価のユウロピウム(Eu(III))錯体は光増感剤となる配位子からEu(III)へのエネルギー移動によって4f軌道間の遷移に基づく色純度の高い赤色発光を示します。これまで、Eu(III)錯体を効率よく光らせるためには配位子の最低励起三重項状態(T1)準位を高く保ち、Eu(III)からの配位子への逆エネルギー移動を抑制する必要がありました。本研究では、Eu(III)の発光準位よりも低い準位にT1状態を有するピレンを光増感剤として、吸熱型エネルギー移動に基づく発光を初めて実証することに成功しました。
今後はこの吸熱型光増感機構の詳細を解き明かすために、本賞を励みとしてより一層研究に邁進していきたく思います。
1B-05
β-ジケトナート配位子を有するセリウム錯体の電荷移動発光と理論的解析
○富川 虎乃輔1, 庄司 淳2, ワン メンフィ3,5, 赤間 知子3, 斉田 謙一郎4, 小林 正人3,4, 伏見 公志5, 中西 貴之6, 武次 徹也3,4, 長谷川 靖哉3,5, 北川 裕一3,5
(1北大院総化, 2奈良女大院工, 3北大WPI-ICReDD, 4北大院理, 5北大院工, 6物材機構)
この度、第40回希土類討論会において学生講演賞を受賞することができ大変光栄に感じております。これまでCe(III)を利用した発光機能は金属内遷移であるf-d遷移に基づくものが知られていました。本発表では、強い電子アクセプター性の配位子を利用することでCe(III)-配位子間のf-π*電荷移動励起状態を安定化し、極低温条件下においてf-π*励起状態からの発光を初めて観測しました。また、量子化学計算による無輻射失活経路探索により、電荷移動先の配位子のπ共役平面の歪みが低い発光効率の原因であるf-π*励起状態からの急速な無輻射失活を引き起こすことを突き止めました。
今回の受賞にあたりまして日頃よりご指導いただきました北川准教授、長谷川教授、ワン特任助教ならびに先端研の皆様と、北大・工学研究院の伏見准教授、物材機構の中西博士、北大・量子化学研究室の武次教授、小林准教授、赤間助教、斉田特任助教、そして奈良女子大の庄司助教に心より感謝申し上げます。本賞を心の糧とし、Ce(III)錯体の更なる機能化を指向して今後も研究活動に尽力していく所存です。